バリュー専門のアカデミーのブログ:賃金水準、世界に劣後 脱せるか「貧者のサイクル」
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賃金水準、世界に劣後 脱せるか「貧者のサイクル」
2019年3月19日付けの日経新聞で衝撃的な、一方日本人であれば、やっぱりそうかねという記事が出ました。
日本の賃金を世界と比べると、大きく取り残されていることが分かりました。
ここ数年は経団連中心に、一律のベースアップの働きかけで一部の企業は、ベースアップもありますが、過去20年間の時給でみると見える世界は変わってきます。
過去20年で日本は時給が9%減少、主要国で唯一のマイナス!
という事実です。国際競争力の維持を理由に日本は賃金を抑えてきたこともあり、欧米に大幅に劣後した結果となっています。
低賃金を温存するから、生産性の低い仕事の効率化が進まないず、付加価値の高い仕事への転換も遅れ、賃金が上がらないという、
「貧者のサイクル」に陥っている
のが現状です。
日本を代表するトヨタ自動車では、「頑張った人、成長し続ける人に報いたい」と、2019年の春季労使交渉では、ベア見直しを含めた賃金体系の再考を提案し、労使で協議を続けている状況ですが、これらの賃上げを取り組んでいる企業は、ごく限られた一握りの企業でしかないのが現状です。
新卒を一括採用し、終身雇用と年功序列で、昇進や昇格に極端な違いを出さない。トヨタはこんな日本的な人事・賃金の先導役になってきた。
デフレ不況と円高、過剰な設備と人、1990年代後半から、製造業などは賃下げを含めた賃金抑制に動き、気がつけば日本の賃金は世界から大きく取り残されてしまいました。
経済協力開発機構(OECD)は残業代を含めた民間部門の総収入について、働き手1人の1時間あたりの金額をはじいたデータがあります。
国際比較が可能な17年と97年と比べると20年間で日本はなんと、
9%下落
しており、主要国で唯一のマイナスという散々な結果となっています。
英国は87%、米国は76%、フランスは66%、ドイツは55%も増えており、隣国の韓国は2.5倍。日本の平均年収は米国を3割も下回っているという完全一人負けの状況です。
では、なぜ生産性が上がらないのか?
逆説的だが、日本の企業が賃上げに慎重な姿勢を続けてきたことが生産性の低迷を招いたとの見方もあります。
「賃上げショックで生産性を一気に引き上げるべきだ」
と、国宝・重要文化財の修復を手がける小西美術工芸社のデービッド・アトキンソン社長はこう訴えています。
ゴールドマン・サックスの名物アナリストだった同氏による主張の根拠は以下です。
-
- 低賃金を温存するから生産性の低い仕事の自動化・効率化が実施されず、付加価値の高い仕事へのシフトが進まない
- 結果、生産性が上がらずに賃金も上がらない。いわば貧者のサイクルに日本は陥っている
アトキンソン氏は最賃の毎年の上げ率を現在の3%台から5%台に加速させるべきだと指摘しています。
低生産性の象徴とされる中小企業に、省力化の設備投資や事業の変革を迫る起爆剤になるとみています。
例えば、英国では1999年に最賃を復活させて18年までに2倍超に上げた実績があります。しかも、低い失業率のまま生産性を高めているのです。
最賃の形で賃金を強制的に上げることが正しいかは議論が分かれますが、世界的にみて大きく劣る日本の生産性を上げていかないことには、国際競争に勝ち残れないのは間違いないと思います。
「いきなり!ステーキ」を展開するペッパーフードサービスの一瀬邦夫社長は断言しています。
「賃上げなくして成長はない。ただしもうかるビジネスモデルがあってこそだ」。
同社では、1月にベアと定昇で平均6.18%賃上げをしています。2018年は230店を純増。賃上げで事業を拡大する好循環につなげている数少ない企業です。
働き手の意欲を高め、優れた人材を引きつける賃金の変革をテコに、付加価値の高い仕事にシフトしていく潮流をつくり出すことが、今後の日本には必要不可欠だと言える。
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